ほろほろ日記

こぼれ落ちる思い出を繋ぎ止めるメモ

イタリアでスーツケース諸々盗難にあって考えたこと。

 

 

先日、イタリア旅行に行ってきました。ミラノフィレンツェ、ローマを1週間ばかりかけてめぐる楽しい旅になる予定でした。ところが、三日目の朝、ほんの2〜30分車を離れたそのすきにカーナビ、スーツケース、PC、iPadと、すべて盗まれてしまいました。車のドアの鍵が壊されていたようです。


すごく天気のいい日で、スフォルツァ城近くの閑静な住宅街の路上駐車場、まさかの出来事でした。旅はまだはじまったばかり、ちょうどフィレンツェへ移動する日だったのですが、とにかく警察へ連絡すると、とりあえず来いと言われました(あちらからは来てくれないのです)。でも道もわからないしショックで頭も混乱する。道を人に聞いたらみんな快く教えてくれるもののそれぞれ違うことを言います。(友人はイタリアで道を尋ねるときは最低三人以上に聞くようにしていたらしいです)。結局1時間以上かかって警察署についたものの、盗難レポートを出しただけで終了しました。フランスで財布すられたときもそうだったけど、警察署の待合室ではみなさん一様に憂鬱そうな顔をしていて、私もやるせなかったので気を紛らわすためにそこにいた何人かと片言の言葉で会話を試みました。学生さんらしき中国人の若い女性は家においてた銀行のカードを空き巣に盗まれたとか。袖すり合うも多少の縁、警察署で会うも多少の縁です。

幸い、パスポートと財布と携帯は手持ちのカバンに入っていたので無事でした。ただ、普段の生活に必要なものは、誇張無く、「すべてなくなった」感が半端なかったです。車のトランクにあった大きなスーツケースが忽然と消えた光景は今思い出してもお腹が気持ち悪くなります。

盗難現場近くで色々世話してくれた現地の人曰く、「このへんはイタリアでも本当に危険なんだ。」と。ただ、スーツケースの中には高価なものは特に入っていないと伝えると、「それならきっと犯人はこの辺でスーツケースごと捨ててるかもしれないから、一応見て回るといい」とのアドバイスをもらいました。だめもとで車で見てまわったけど、見つかりませんでした。

 

写真は現場近くのスフォルツァ城。

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「どうしようもないから、とりあえずもうフランスに帰ろう。あたしゃもう帰りたいよ」って旦那に言ったら「ここで帰ったら俺たち完璧に屈したことになるよね」と。
何に張り合っていたのかもわからないですが、まぁ、確かにそこで帰っても帰らなくても必要なものは買わなきゃいけないわけで(フランスの家のタンスはほぼ空っぽ)、2日後に友人宅も訪れることになっていたので旅を続行することにしました。

 

次の日は、フィレンツェカルフールで買い物をして半日以上つぶれました。フィレンツェまで行ってスーパー(しかもフランスの)で半日以上過ごす観光客はなかなかいないでしょう。

 

買い物を終えて、とりあえず気分転換に(本来の目的のはずの)観光へと繰り出しました。まずはフィレンツェ大聖堂のドーム最上部への階段をのぼったのですが、数百段に及ぶ急な狭い階段は次女を固まらせ、結局旦那がほぼ担いで上まで上がることになりました。そこからの眺めは本当に綺麗で、嫌なことも(一瞬だけ)忘れることができました。その後も美術館やらを巡り、一通り短縮版ではあったものの予定していた場所はほぼ回ることができました。

 

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今回は事前にイタリアの歴史について数冊本を読んで勉強していたので、旅の間、旦那にウンチクを話すのが(一人で)楽しかったです。そのウンチクの一つ、サンマルコ修道院サヴォナローラという修道士がいて(彼は後に神権政治をとる)、彼が行ったことに「虚栄の焼却」というものがありました。要は贅沢品はすべて焼き捨ててしまえという話で中国の文革時さながらのことをやってしまいました。その「虚栄の焼却」が行われた広場を訪れたときに、「私たちのスーツケースに入っていたものなんてサヴォナローラから見たら真っ先に燃やしてしまうようなものばかりだったろうね」と。三日前にあけたばかりだった日本から持って来た化粧水、ちびちび使わないであふれるくらい最後に顔につけときゃよかった、なんて思ったなんて言ったらきっと彼は私を罵倒したでしょう。なんて話をしながらその当時のことに思いをはせました。「ある意味、強制断捨離かな」、と私がいうと旦那曰く「でも、俺たちのスーツケースに入ってたものは贅沢品じゃなくて必需品ばかりだったよね」と全くその通りのコメントをもらって会話は終了となりました。

 

写真はサヴォナローラが院長をつとめたサンマルコ修道院

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フィレンツェをあとにして、翌日はローマ近郊の友人宅で一泊お世話になりました。ラピュタを彷彿とさせる丘の上の都市を眺めながらのドライブ、子供たちは裏山で走り回る、暖炉の火にあたりながらおいしいご飯を食べる、もちろん話は盗難話で盛り上がる。人と話をすると色々冷静に考えられるのが不思議です。今回のことは確かに不運だったけど、誰が怪我したわけでもないし、いい友達もいる、家族も元気、お天気にも恵まれた、これ以上何を望むか、と。

 

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ただ、予想外のことが一件。ローマについたその日の晩、久しぶりに携帯にネットをつなげてメールをチェックしてたら、知らないアドレスからメールがきてた。なんと、私たちのスーツケースひろったよ、と。そのスーツケースは以前アメリカから帰ったときに空港で連絡先を書いたタグをつけるように言われてつけたのがそのままついていて、そこに私のアドレスがあったらしい。紛失したその日のうちにメールきてたのに、すっかりそんなこと忘れてたから、私はメールもチェックしてなかったのです。時すでに遅し、ローマからミラノまで片道7時間はかかる。次の日の飛行機には間に合わない。この旅、二度目の絶望感。でも、これもまたこういう手口の犯罪なんじゃないかとも思い、とりあえず警察に相談の電話を入れてみるとローマの警察はかなり親切に対応してくれました。ミラノの警察署に電話をかけてくれて、紛失レポートを照合し、私に連絡してきた男性の携帯番号も一応調べてくれたあとに警察が電話を直接かけてくれたようです。それで、「彼、市の職員だよ!すごくいい奴だから大丈夫!」。よって、自分たちでミラノまで荷物を取りに行けとのことでした。

 

結局、旦那がネットで探した荷物代行配達サービス会社、その名もmybag.comに高いお金払ってフランスまで送ってもらえることになりました。

帰りに空港でレンタカー会社に事情を説明。そもそも車借りた時点でカーナビの充電アダプターが壊れてて、バッテリー切れてるのに充電できない状態だったのがすべての発端。それを充電するためにパソコン使って車内においてったらこうなったわけで。逆恨みかもしれないけどそれさえなければこんなことにはなってなかったのに、不良品を客にお金とって貸したレンタカー会社は何も責任問われなくてスーツケースともどもすべて奪われた私たちが壊された車の修理費含めすべて弁償しなきゃいけないってどういうことなんじゃい、と私が切れました。だいたい観光客が携帯も使えない場所でカーナビも使えなかったらどうなるか考えてくれ、って聞いたら「マダム、ここはイタリアです。道には公衆電話もあるし、電話番号だって車内のファイルに書いてあるんですよ。必要なら緊急電話でかけることだってできるはずです」だって。

意味不明すぎて倒れそうになった。公衆電話なんて本当に町の中心にしかないし、GPS使えなくて道にまよったからって高速の緊急電話を使って助けを求める人を知っていたら教えてください。でも何が一番頭に来たって、「それは大変でしたね」の一言もなく、盗まれたカーナビのことだけが問題かのような言いぐさ。サービス業っていうものの概念がヨーロッパと日本では明らかに違うんだろうな。半沢直樹に出て来たオギソ次長ばりに机をバンバン叩いて文句言ったけど、頭に来てるときにあぁいうジェスチャーすると怒りが倍増するので体に悪いです。(そんなことしても相手は涼しい顔してるし。)結局、一部のお金がリファンドされるかもしれないし言いたいことあったらカスタマーサービスに連絡するようにと言われて渡されたメールアドレスが間違っていてそこに連絡できないというお粗末ぶり。意図的でしょうか。

 

結局、何か悪いことが起きるときって小さい判断ミスがいくつか重なって起きてる気がする。GPSの件にしても、私たちがもっと注意してたらこんなことにはならなかっただろうし、普段は旦那もパソコンなんか車に置いてかないのにその日に限ってなぜか平和ぼけしてました。私も一瞬「危ないな」って思ったものの、「いや、でもカーナビないと困るし」なんて思いなおして何も言わなかったことが後になって強烈な後悔となりました。

 

とにかく今後の旅では以下のことに気をつけたいと思います。

①スーツケースには連絡先を書いたタグをつけとく(今回はこれで見つかったから一応)
②化粧水などは小分けにして、洋服類も必要最低限持ってく
③持病の薬はいくつかのバッグに分けて持っておく(今回はたまたま私の手持ち用のバッグにも数日分入れておいたので幸い旅が続けられた)
④車の中には決して貴重品は残さない。駐車場も路上ではなくできれば管理人のいるガレージを利用するべし。

*万が一盗難にあった場合は
保険のこともあるのでまずは警察へ必ず盗難届けを出す。そのあとは一応現場周辺を捜索してみる価値あり。(うちのスーツケースが見つかった場所も盗まれた現場からほど近い場所だったので。盗んでかなり短い時間の間に捨てられてたと思わます。)
すっごく落ち込むし人間不信にもなっちゃうけど、もう起きてしまったことは仕方ないので一晩寝たら無理矢理でも頭を切り替えたほうが得策です。
怪我がなかったことを素直に喜びましょう。無くしたものはなんであれ、物であれば買い直すこともできるし、誰かの信頼をなくすよりは物をなくしたほうがましだと私は思ってます。

旦那を見てて感心したことが一つ。パソコンを盗まれた後、関係先の人たちにすぐさま報告し、万が一盗まれたパソコンのパスワードをこじあけられてインターネットにつながれた場合、すぐにすべてのデータが消えるようにiPhone使って設定してました。(そういう機能があるそうです。そしてネット環境につながれた時点で携帯に警告メールが届くようにもしてました。)
物を無くしても、「信頼」だけはなくさないように最善のことをしましょう。