ほろほろ日記

こぼれ落ちる思い出を繋ぎ止めるメモ

今日、奥歯を失った

<備忘録>

 

私はいつも海外で生活を始めるとしばらくして歯の不調に襲われる。

去年の4月にアメリカに来て(3月時点で日本では問題なかった)、7月になぜか猛烈な歯の痛みを感じ始めた。

数日、痛み止めを飲んだけど治らず、しぶしぶ近所の歯医者に行った。

すると、根幹治療必要だからスペシャリスト(endodontist)紹介するよ、行ってきてと言われた。

その日の時点でかなり痛みがひどく、藁にもすがる思いで電話をかけた。すると、悲しいかな。7月4日の独立記念日を週末にひかえたその日は、もう予約でしばらくいっぱい。4日ほど後まで予約が取れないと言われた。

取れないと言われても、本当に痛くて我慢できないとこの時食い下がっておけばよかったと今になって強く思う。この時、「仕方ない」とすぐ諦めた自分に「いや、この国は言ったもん勝ちだってしょっちゅうみんな言ってるよ!諦めないで粘ってみて!」って。ほぼ一年後の今日の日に同じ歯を抜歯することになるなんて、この日の私は想像だにしていなかった。

 

結局、予約の日までとてもじゃないけれど待てない痛みがその後も続き、ベッドを涙でこんなに濡らしたことは青春時代以降じゃないかと思うくらい。

それくらい緊急事態だった。

 

その後、休日診療をやってるちょっと遠い歯科医で治療したものの、この時のアセスメントと治療が不十分だったことが今日の日につながっていることは間違いない。加えて、1月くらいに歯茎の腫れや膿を歯科医に相談したとき、「感染症ではなさそうだから、様子みておきましょう」ってなこと言われてそのまま今日まで放置した結果が今日の抜歯。

人間、自分に都合のいい情報は信じたくなる生き物だけど、もっと早くセカンドオピニョンもらいに別の医者にかかるべきだった。

歯科医じゃなくて内科でも外科でも、手遅れになるまえに、これ本当大事。

 

 

もう、色々ありすぎてここは省略😭

 

その時の治療費とクラウン代、高いお金払って、抜歯のときには30分もかからずに何も残らなかった。

 

抜歯の前に、医者とアシスタントが本当にどうでもいい雑談を楽しそうにしているのを横目に診察台に横になっているのが辛かった。

 

インプラントを勧められたけれど、我が家は来月また引っ越しを控えているので次のステップは新しい歯科医ですることになる。

見通しが立たない状態って本当に不安。

日本でインプラントの専門医のいるところをぐぐると、ちょっと希望も見えてきた。

見通しがもてる、手立てがある、って思えるだけで人間は強くなれる。

 

抜歯のあと、薬局に薬を取りにいったら、「まだ処方箋届いてないよ」って言われて、「え!」ってなった。歯にガーゼ挟んだまま、麻酔も切れてない状態だったので、それでなくても拙い英語がさらにひどい状態になった。相手も聞き取るの大変そう。

「ごめんね、まだ麻痺してて。。。」って、言ったら、「わかるわよ」だって。

歯科医に電話して確認したいんだけど、私話せないから代わりに聞いてほしい、って言ってみたらやんわり断られた。

苦痛を感じてる人に対して「I understand」なんて気軽に言うもんじゃないな。

 

確認したら、医者が私の処置のあと別のオペに入ったからまだ送れてないとのことだった。それなら私が出るときに教えてくれよ!って思った。

こんなとこでも絶対謝らないのがアメリカ式。

 

結局、抜歯後に往復40分かけて薬局と家を往復しただけ。歩いて帰る途中、ふと口元に違和感を感じて触ってみると、なんと血が・・・

ドラキュラか!

 

今日は固形のものは避けてって言われたけど、ささやかな逆襲として(何に対してかはわからない)、昨日の残りのピザとコーン(さすがにかぶりつけないので、そそぎ落としてバター炒めにした)を食べてみた。職場の上司が以前、インプラントの施術直後に「私、カレー飲むから」って言いながらカツカレーをきれいに平らげていたのを思い出した。今日は改めて彼女に対して尊敬の念を抱いた。あの日は私の送別会を兼ねていたから、無理してくれたにちがいない。でも、あの笑顔と、「キャベツはきついから残す」と言いつつ片方の歯だけでカツを完食していた事実を私はきっと生涯忘れないだろう。

 

夕方、珍しく30度近くまで気温が上がった。暑い。でも抗生剤取りにいかなきゃ。

一人で行くのが嫌だったから、子どもたちに一緒に行ってくれないか頼んでみた。長女が快く一緒に付き合ってくれた。本当に優しい子だ。帰りにスーパーでゼリーやらヨーグルトやら、私が食べやすいものを買って帰った。ハーゲンダッツが安くなってたので、購入。手に抱えてレジにむかってると、なんと今朝私の歯を抜いた歯科医が買い物かごもって買い物をしている。

私はハーゲンダッツのアイスを手にもったまま、気が付かないふりをして足早にその場を去った。

 

家で、抜歯が与える体への影響だとか(だいたい悪影響について)、処置の選択肢とか読んでると、ますます気分が下がる。

失った歯のことで頭がいっぱいだったので、娘にラインで

 

「この喪失からも、私は何かを得るべきでしょうか、恨み言以外に」

 

って聞いてみたら

 

 

さぁ

 

って返ってきた。

 

 

それでも、娘は矯正をしたときに数本歯を抜いた経験があったので、「当日は一番抜いたとこが気になるけど、何日かしたら傷もふさがるから気にならなくなる」と言った超実用的なアドバイスをくれたのがとてもありがたかった。

 

失くしてからでは取り返しのつかないものは歯だけじゃない。

でも、失くしてしまったらしまったであとは今後のことを考えるしかないわけで、今日たくさん悲しんだから、明日からはすこしだけ前向きになれるかな。

 

薬局から帰ったら、次女はTWICEの曲をかけながらベッドで昼寝してた。

 

来月、またJuly 4thがやってくる。

一年があっという間。