ほろほろ日記

こぼれ落ちる思い出を繋ぎ止めるメモ

場面緘黙。友達からの「なんで話さないの?」に答えるために、クラスの保護者へこんなお手紙を書きました。

我が家の次女には場面緘黙があります。

かんもくネット〜場面緘黙とは〜


場面緘黙のお子さんをお持ちの方なら耳にタコができるほど聞いているであろう言葉の一つに、他のお子さんからの「〜ちゃん、なんで話さないの?お家では話すの?」と言った質問があります。
我が家の場合も例に漏れず、この数年間同じ質問を受け続けてきました。

 

これまで幼稚園のクラスの保護者の方たちには、親しい人を除いてほとんど娘の場面緘黙については話しをしたことはありませんでした。

ただ、ある時期から幼稚園から帰ってくる娘の表情がこわばっていることが多くなり始めました。


ある日、娘が私に「○○ちゃん(自分)、臭い?」と聞いてきました。「そんなことないよ、誰かに言われたの?」と聞いてみると、クラスメートのお友達から「犬の匂いがする」と言われたとのことでした。その他にも「『あ』って言うまで許さない」って言われて口を無理やり広げられた、というのもありました。さらに、朝、ご機嫌に髪を二つ結びにして幼稚園に行ったのに、帰ってくると髪がボサボサ。
どうしたのか尋ねると、「ゴム、取っちゃった。みんなが頭ぐちゃぐちゃにしたから」。
小さい掌に握ったゴムを私に見せてきた時には胸が締め付けらました。

 

先生にも意地悪してくるお友達に対して個別に注意してもらったり、色々と配慮していただいたりしていたのですが、なかなか状況は良くなりませんでした。

そんな中、クラスの親しいママさんに相談したところ「お手紙書いてみたらいいんじゃないかな」というアドバイスをもらいました。

特定の子の保護者に向けて、というよりはクラス全体の保護者に向けて書いてみたらどうかな、と。


今まで他の ママさんたちから「○○ちゃん、あんまり幼稚園でお話ししないの?」と聞かれることが少なからずあったことから、「○○ちゃんは幼稚園で話さないんだよ。」ということを家でも親に話している子どもたちが一定数いることは確かだろうと思いました。

それに、おそらく子どもたちは純粋に不思議に思って「なんで話さないのか」という理由を聞きたいのだろうとも思いました。

今回は、子どもたちの「なんで?」が「理解してもらうチャンス」になりますように、という願いを込めてお手紙を書いてみようと決めました。

 

保護者へのお手紙を書く時に意識したポイントは以下の3つです。

緘黙の症状を説明するときには、できるだけ他の人が想像しやすい例えを入れること。
本人が感じている困難や辛さを、具体的に相手に想像してもらえるかどうかで理解度がかなり違ってくると思います。

⑵他の子から見た娘の見かけ上の状態(話さない)と、実際の心の中の状態(話せない)のギャップを埋めること。
これは、「誤解」を解くという作業に近いかなと思います。

⑶娘が大好きな遊びを知ってもらうこと。
緘黙というのは娘のキャラクターを形成する一部分ではありますが、全てではありません。こういうお手紙を入れたことで「緘黙」というフィルターを通した娘だけを見るのではなく、彼女のその他の部分も知ってもらいたいと思いました。

 

緘黙の状態というのはそれぞれ人によってその症状や心的な感じ方も異なることが多いので、それぞれのお子さんの特徴に合わせたものを考えるという作業は欠かせません。場面緘黙という名前のみが一人歩きしてしまって、その子らしさというものが影に隠れてしまっては本末転倒になってしまいます。

 

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このお手紙を入れてから、明らかに娘の表情が明るくなりました。幼稚園の先生にも確認したところ、「お友達の接し方が明らかに変わってきました」との言葉をいただきました。もちろん、全てが全てうまくいったというわけではありません。小さいことで言えば今でも意地悪は時々あります。

ただ、今回に関してはデメリットよりもメリットの方が上回っていたと言うことはできます。当事者の親である私や先生よりも、子どもたちにとって一番パワフルな影響力を持つのはやはりそれぞれの保護者です。その保護者の方たちが適切に子どもの疑問に答えてくれたこと、娘の状態を説明してくれたこと、これが今回の変化の一番の理由だと思います。

一枚のお手紙に込めた思いは、たとえ全員にわかってもらえなくても、何人かだけでも理解してくれる人が出てくれたら、それは大きな一歩になることがあります。

実際、お手紙を入れた後に会った何人かの保護者の方からは、温かい言葉をいただきました。

他の保護者を信じること、誠意を持って伝えることから始まる新しい関係ができたことは、私にとっては大きな希望になりました。